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カメラ画像利活用ガイドブックについて(1)

IoT推進コンソーシアムの”データ流通促進ワーキンググループ”(座長:森川博之東京大学教授)の下に設けられた”カメラ画像利活用サブワーキンググループ”(座長:菊池浩明明治大学教授)がとりまとめた『カメラ画像利活用ガイドブック』が公開された。

このガイドブックは、主に以下の類型のカメラによって撮影された画像の利活用について、運営主体が行うべき準則を規定している。いいかえれば、下記の具体的事例に則したガイドブックであって、汎用性のあるものではない。

(1)閉ざされた空間(店舗等)に設置されたカメラで、入出の時点で、画像を取得し、特徴量データを抽出した後、速やかに撮影画像を破棄するもの。
(2)閉ざされた空間(店舗等)に設置されたカメラで、空間内を移動する画像を取得し、動線データの生成に必要な座標値を抽出した後、速やかに撮影画像を破棄するもの。
(3)屋外に向けたカメラで、通行する物体を、人・車等を識別し、カウントした後、速やかに撮影画像を破棄するもの。
(4)屋外に向けたカメラで、街中の看板・交通標識、及び道路の混み具合を識別し、これらの情報を抽出した後、速やかに撮影画像を破棄するもの。
(5)準公共空間(駅改札等)に設置されたカメラで、通行する人物を撮影し、アイコン化処理の後、速やかに撮影画像を破棄するもの。

筆者も上記サブワーキンググループのメンバーであったが、全4回の会議のうち最初と最後の2回にしか出席できず、内容の策定にはあまり関われなかった。そこで、罪滅ぼしというわけではないが、このガイドブックについて、コメントをしておきたい。

まず「適用ケース(1)」は、コンビニやスーパーなどの小売事業者において、来店者の人物属性(年齢・性別)を判別し、店内での平均滞在時間やレジ到達人数を予測し、従業員の効率的なオペレーション(レジが混雑しない時間帯にフロア業務を行うなど)を図る、という使用方法である。このケースにおいては、入店時の画像から属性に関する特徴量データを抽出し、速やかに撮影画像を破棄する、という。
適用ケース(1)の場合、顔画像から抽出される特徴量情報は性別や年齢(正確には年代であろう)といった抽象的なものであり、個人特定不能であるから、個人情報にはあたらない。プライバシー権の侵害にもあたらないと考える。

ここで議論になったのは、抽出する属性に人種を含めてよいか否かであった。私は含めてよいし、今後来日外国人が増えることを踏まえると含めるべきだと主張したが、大勢は反対だったようだ。反対の理由の一つは、人種が改正個人情報保護法の規定する要配慮情報に該当することにあった。だが、個人特定不能な情報なら、人種も個人情報にはあたり得ないのだから、要配慮情報に該当することもあり得ない。反対の意見として、「人種を理由に対応を変えることは、人種による差別につながるから許されない」というものがあった。それなら、性別による差別も許されないのだから、男女の属性をとるのも許されないとしなければ一貫しない。また、そもそも、店内の混み具合を予測して「店員の効率的なオペレーションを図る」というなら、来店人数だけ数えればよく、なぜ性別年代などの属性情報を抽出するのか、分からない。たとえば「女性は一般に滞在時間が長い」などの前提があるのかもしれないが、もしそうなら、外国人客の滞在時間も一般的には長いだろう。

適用ケース(1)には、「入り口で属性を取るだけで本当によいのか?」という問題もある。このケースでは「店内滞在時間」を計るというのだから、本来出店時も撮影し、突合しなければ滞在時間は計れない。あるいは、出店時は撮影せず、レジで店員が入力した客の属性情報と突合すればよく、何も買わずに出店した客は無視するという考えかもしれないが、この場合、入店時のコンピューターによるによる属性分類と店員の入力属性とが齟齬する、という問題が発生する。これを防ぐためには、レジでも撮影を行いコンピューターで属性分類を行う必要があるが、そのためには、特徴量情報を突合可能なレベルで残しておく必要がある。実際には、大概の店舗はそうするだろう。そうなると、「適用ケース(1)の特徴量情報は個人情報ではない」という前提が崩れる可能性が出てくるから、個人情報にあたる場合、あたらない場合に関する考察が必要になる。

以上をまとめると、適用ケース(1)は、設例としてやや中途半端感が否めない、ということになろう。

他の問題もあるが、それは適用ケース(2)に関する考察で触れることにしたい。

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