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防犯カメラと肖像権とプライバシー権について

いわゆる防犯カメラは、肖像権を侵害するとも言われるし、プライバシー権を侵害するとも言われる。どちらが正しいのだろうか。あるいは、肖像権とプライバシー権とは、同じ権利なのだろうか。

答えは、「肖像権とプライバシー権とは別の権利であり、防犯カメラは、その両方を侵害する。但し、本質はプライバシー権の侵害にある」だ。

防犯カメラの画像と、肖像写真とを比較して論証しよう。

1993年、イギリスで2歳の男の子(James Patrick Bulger)が2人の少年に誘拐され殺害された。この写真は、誘拐の瞬間を撮影した防犯カメラの画像とされている。捜査機関は、撮影時間や場所と照らし合わせて、画面中央の幼児を被害者と推定できる。そして、その手を引く人物が誘拐犯であり、この人物は小柄な男性、おそらく少年と見当をつけるとともに、服装や体格などといった、犯人を特定する情報や、撮影時、どちらに向かって歩いていたかを知ることができる。また、少年と対向して歩く女性が、誘拐犯の人相を見ているかもしれない、という情報を得るとともに、その女性の体格やおおよその年齢を推定できる。

すなわち、この防犯カメラ画像にとって最も重要な情報は、被害者・犯人・目撃者を特定する情報であり、彼らが撮影当時、どこで何をしていたかという情報である。そして、これらの情報を導き出すために重要なのは、この写真がいつどこで撮影されたかというメタ情報であり、これがなければ、防犯カメラ画像はほとんど何の意味も持たない。

一方、こちらの画像は、典型的な肖像写真である。われわれは、撮影された男性の表情、服装、所持品、皺の一本一本から、この人物の人間性や人生、社会的地位、あるいは人間的・性的魅力の有無や程度を読み取ることができる。すなわちこの画像の本質的要素を一言で言うと、撮影された人物の人格である。そしてその人格は、その人の外貌と分かちがい。肖像権が法律上、人格権といわれるゆえんがここにある。

一方、この写真が何時どこで撮影されたか、この人物がどこの誰であるか、撮影された当時、この人物が何をしていたかは、本質的要素ではない。もしかしたらこの男性は歴史上の有名人かもしれないが、それが分からなかったからといって、この写真の価値(記録された被撮影者の人格)が無くなるわけではない。

このように、防犯カメラの画像と、肖像写真とは、本質的に異なる。本質的に異なる以上、両者に反映された法律上の権利は異なる。これに基づいて整理すると、プライバシー権とは、みだりに特定されず、その行動を記録されない権利であり、肖像権とは、みだりにその外貌を記録されない権利であるといえる。

通行する人間を撮影する防犯カメラは、人の行動を記録するとともに、その外貌をも撮影する。したがって、防犯カメラはプライバシー権と肖像権の両方を侵害している(その侵害が許されるか否かは次の問題だ)。ただし、防犯カメラ運用者にとって、撮影された人間の人格的評価は何の意味もないし、そもそも、人格的評価が可能なほどの精度で撮影されることは希だ。上記防犯カメラ画像に至っては、犯人は後ろ向きで、その人格評価はほとんど不可能である。このように、防犯カメラの本質は、人の行動を記録することにあり、また、その人が誰であるかを知るための情報を記録することにある。

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