共同住宅に設置される監視カメラには問題が多く発生する。なぜなら、監視カメラが外部にではなく、内部に―それも特定の住人に―向けられていることがあるからだ。
ゴミ出しルールを守らない住人、エレベーター内で小便をする酔っ払い、禁止されたペットを持ち込む住人など、共同住宅内でのルール違反対策は頭が痛い。監視カメラの設置は、解決策の一つだろうが、それですべてが解決するわけではない。
分譲マンションで監視カメラを設置するには管理組合の決議が必要であろうし、運営規則の制定や、撮影中である旨の注意書きを、目立つ所に貼り付けることも必要だ。それで違反が無くなればよいのだが、問題は、それでも堂々とルールを破る輩に、どう対抗するかである。
カメラ映像を公開することは許されるか、という質問があった。結論から言えば、原則として許されないだろう。管理組合としては、まず、当の本人に直接、違反行為が録画されていると告げ、以後違反しないよう注意するべきだし、それで足りるからだ。それでも止めない場合には、事前警告の上、氏名を公開することが許される場合はあろう。ただ、公開するとしても、回覧板のような方法をとり、部外者の眼に触れないよう、配慮することが必要だ。録画映像を公開することは、氏名を公開することに比べ、プライバシー権侵害の度合いが高いし、そうしてまで、映像を公開する必要性が高い場面は、想定しづらい。管理組合が直接注意しても、氏名を公開しても、一向にルール違反を止めない場合に限り、録画映像その者ではなく、その写真を回覧板に添付するような形で内部的に公開することは、場合により、適法になることがあろう。
画像では誰だと特定できない場合はどうか。この場合は、公開することが許される場合があろう。一般的には誰か分からなくても、当の本人が自分だと分かる場合には、再発防止を期待できるからだ。
なお、上記質問の回答の中に、本件映像は個人情報保護法の適用を受けないから、公開しても何の問題もないというものがあった。これは思い切り間違いである。本件映像が個人情報保護法の適用を受けない場合であっても、画像の公開は、れっきとしたプライバシー権の侵害であり、違法性の阻却事由が無い限り、公開された本人から、民法709条に基づく損害賠償請求を受けることになる。
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